「Global Youth Project in Nepal 2019」報告

概要

 2019年2月11日~2月18日の日程で「Global Youth Project in Nepal 2019」(研修企画:YSP-Japan)を開催しました。今回、日本から社会人と大学生を含む7名がプロジェクトに参加し、教育支援を中心に、各学校での日本文化のクラス、ホームステイ体験、ヒマラヤを見渡すトレッキング、そしてネパール人学生によるプレゼンイベントS!NERGYの開催など様々なプログラムを行いました。ツアーを通してネパールの文化や現状を学ぶだけでなく、日本人である自分たちがすべきことを考える期間となりました。プログラムと参加者たちの体験をお伝えします。

プロジェクトの趣旨

 一人当たりのGDPが約848ドル(2016/2017年度,ネパール財務省)とアジアの中でも最貧国のひとつと言われているネパールではカースト制が根強く文化の中に残っており、貧富の差が激しい国です。また女性の成人識字率は半数にとどまるなどカーストや性別で教育機会の差も激しい国です。教育機会の平準化と国全体を発展させていく青年リーダーが必要となっています。
 YSP-Japanでは国際貢献と多文化共生をアジェンダとして掲げ2013年からネパールでの教育支援を開始し、各学校・施設に必要な支援を行ってきました。今回のツアーでは学校の校庭整備工事や、障害児施設への食糧や文房具の寄付など教育環境の整備、そしてネパール人学生が自らのアイディアを発信するS!NERGYを開催しました。
 また、兄弟姉妹結縁とホームステイを通し、ネパールのリアルな生活を体験しただけでなく、各学校施設では日本文化クラスを持ち、ソーラン節を踊るなど、互いの文化を紹介し合い国際理解、国際交流を実体験できる内容となりました。

Daisy Educational Academy学校での校庭整備工事

 ネパールでは10~5月が乾季、6~9月が雨季となり、雨期になると毎日スコールに見舞われます。道路が整備されていない地域も多いため、物流が大変困難になります。学校施設においてはスクールバスの運転も難しくなり、子どもたちの遊び場である校庭も使えなくなってしまいます。
 今回、Daisy Educational Academyでは校庭にコンクリートを敷き雨期の時期も生徒たちが快適に学校生活を過ごすための支援を行いました。YSP-Japanだけでなくネパール政府や他団体からの支援も集まり実施に至りました。
 参加者も砂と砂利、水を混ぜてコンクリートを作るところから作業をし、校庭の一部を舗装しました。

新たな家族との出会いとホームステイ体験

 Daisy Educational Academyでは兄弟姉妹結縁式も行われました。兄弟姉妹結縁式とは国籍や文化の違いを超えて家族の絆を結ぶ式典です。そして、その日の夜は結縁相手の家にホームステイをします。ネパールは家族をとても大切にする文化を持ち、参加者たちは親族含め大勢の新たな家族に大歓迎されました。また、リアルなネパールの家庭に入り、中には80年以上前に建てられた土壁の伝統的な家に泊まった学生もいました。夕食ではネパールの家庭料理「ダルバード」を手で食べる方法を教えてもらい、参加者たちはてこずりながらも積極的にネパールの文化を体験しようと挑戦する姿が見られました。
 たった1日のホームステイでしたが、別れの時には名残惜しさに胸が詰まる、温かい思い出となりました。

Conflict Victim and Disable Society Nepal(障害児施設)訪問

 身体障害、学習・知的障害、自閉症などの障害を持つ人々が生活する施設を訪問し、お米と文具の支援を行いました。また、ソーラン節を踊ったり、折り紙を一緒に折ったりしながら児童と交流しました。
 施設の代表のタパさんは自身も高校生の時から足腰に障害を抱え、親からも「なぜ障害があるのに勉強する必要があるんだ」と言われながらも大学を卒業しました。そして、この施設を設立し、道端に捨てられた障害児たちをも施設に連れてきて、今日まで運営してこられました。
 参加者の一人からはこのように感想を述べています。「今まで障害児と関わったことがあまりなかったのだけど、全ての人が教育を受けられるように、ということに関して自分の視野が狭かったことを感じたし、考え直す機会になった」と話していました。

ヒマラヤ山脈「アンナプルナ」を見渡すトレッキング

 首都カトマンズからバスで8時間かけてポカラまで行き、そこから2時間半のトレッキングを行いました。道中の農村には油を作るための菜の花が美しく植えられ、各家庭には牛乳用のバッファローがいます。首都とはまた違う自然と人々が共存する豊かなネパールに癒されました。
 山頂の村、ダンプースからはヒマラヤ山脈の一つである、7000メートル級のアンナプルナが神々しく見渡せました。夜には雨が降りましたが、朝陽の昇るアンナプルナはさらに美しく目で見ないと分からない立体感に感動し、自然のパワーをいただきました。

ネパールの未来を担う学生たちによるS!NERGY

 ネパールの学生によるプレゼンイベント、S!NERGYが開催され、カトマンズと周辺地域の高校から代表者8名が参加しました。「男女平等とネパールの未来」、「経済開発とネパールの未来」の2つからテーマを選び自分自身のアイディアを含めて発表を行いました。
 男女間での教育機会や、社会進出に大きな格差のあるネパールの実情を女子生徒たちは切実に訴えていました。経済開発の分野においてはネパール自国内での生産や、インフラ整備、観光分野の向上など様々なアイディアを提案してくれました。
 1位と2位の生徒は夏に日本で開催されるスタディーツアーに参加します。
 翌日に訪問したCreative Leaner’s Academyでもスピーチコンテストを行い優勝した生徒も日本でのスタディーツアーに参加します。

全ての人が教育を受けられるように

 「Global Youth Project in Nepal 2019」は滞在期間8日間と短い期間でしたが、様々な形で教育支援に関わる内容となりました。
 SDGsの目標の1つ、「質の高い教育をみんなに」を達成するため、その地域、その人に必要な支援を考え、全ての人が教育を受けられるようにこれからもサポートを継続してまいります。

 また、参加者においては幼稚園児から大学生までの学生たちとの交流、先生方、ホームステイ先の家族など沢山のネパールの方々と関わり、文化体験し、美しいヒマラヤを眺め、決して写真では分からないネパールの美しい文化、景色、そして実情、問題を目の当たりにする期間となりました。参加者のこれからの人生に大きな影響を与える体験となったと思います。
 

参加者の感想抜粋

・ネパールの学生たちには驚かされました。彼らは母国の発展のため、自分の夢と具体的なプランをもって堂々と語っているからです。男女差別の是正や、経済発展を題材として、国を本気で変えたいと訴えているその姿勢に感動しました。彼らは積極的で、常に明るく、未来に希望を持っているようでした。「私はどうなのか、どのように世界に貢献していくか」このテーマに対して真剣に向き合う期間となりました。
 
・ご飯を手で食べること、電気の停電、断水、日本であれば2時間で行けるような距離が、山やでこぼこ道で道路が整っていないために8時間もかかること。日本人にとってはアクシデントのように感じてしまうかもしれないが、現地の人たちにとっては、当たり前のこと。少しは予想していたけれど、現地に行って環境の違いをすごく実感しました。それと同時に日本の環境がどれだけ発展していて整っているかを身にしみて感じました。
 
・教育が必要であるとスピーチで主張している生徒が沢山いました。自分の専門分野である教育を通して少しでもネパールや世界の中で、人の心に残るような指導をして、一人一人が法整備、公衆衛生面の改善など、国を良くしていく職業を目指して、国のために生きたいと思えるような指導をしていきたいと思いました。

 

スケジュール

日にち スケジュール
2/11(月) 各空港よりカトマンズ到着
スワヤンブナート観光
2/12(火) Daisy Educational Academy学校訪問(セレモニー、校庭整備工事の視察と作業、兄弟姉妹結縁、生徒たちとレクリエーション)
ホームステイ体験
2/13(水) Daisy Educational Academy学校にて日本文化クラス
Conflict Victim and Disable Society Nepal(障害児施設)訪問(米5袋寄付、児童との交流会)
2/14(木) ポカラへ移動し、トレッキング(登山)
2/15(金) アンナプルナのサンライズを眺める
トレッキング(下山)
ポカラ観光
2/16(土) S!NERGYイベント
2/17(日) Creative Leaner’s Academy学校訪問(セレモニー、スピーチコンテスト)
ショッピング
スワヤンブナート観光
トリプトパン空港から各空港へ
2/19(火) 日本帰国
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