「Global Youth Project in Cambodia 2018」報告

概要

 世界平和青年学生連合(YSP-Japan)では2018年からあらたなカンボジアでのプロジェクトを開始しました。モリンガの植林活動を中心に、学校での衛生教育や日本文化のクラス、そして歴史学習を行うものです。とくに南部の都市、カンポートでは現地の学生も植林プログラムに参加することで友好関係が深まりました。参加した25名の高校生の奮闘とさまざまな出会いをお伝えします。

プロジェクトの趣旨

 YSP-Japanでは環境保護活動をアジェンダとして掲げていますが、とくに二酸化炭素を多く吸収してくれるモリンガの植林活動に力を入れています。今回はカンボジアの村を訪問してモリンガの素晴らしさを伝え、各家庭に植えてもらう企画を考えました。モリンガは地球環境に良いだけではありません。栄養豊富な葉っぱや種を食べることで村人の健康維持にも役立ちます。このようにモリンガを広め、植林することが今回のカンボジアでのメインプロジェクトです。
 またこのプロジェクトは植林活動を行うと共に、青年教育のプログラムでもあります。教育の面では「奉仕」と「学び」をコンセプトに掲げてコンテンツを検討しました。カンボジアの農村部では安全な飲料水の確保が困難なことを出発前に学び、カンボジアの小学生のために「衛生教育の紙芝居」と「日本文化のクラス」を奉仕活動として行いました。参加者は英語でのコミュニケーションにも挑戦しました。カンボジアの学生と日本人の学生で一緒に一つのグループを作りました。カンボジアの人々と触れ合い、そしてカンボジアの歴史を学ぶ中で「平和」について考え、日本だけにとどまらない「世界人」となるために取り組む期間となりました。

プノンペンでの体験記

 「意外と暑くないね!」プノンペンの空港に着いたときにある参加者はそうつぶやきました。たしかに日本ほど暑くはありません。私たちが滞在した期間は一番暑い日でも気温は30度を少し超えるくらいでした。40度近くまであがる日本に比べると到着した夕方の時間はとても涼しく感じられました。プノンペンの空港を出ると、すぐに夕食の時間です。初めて食べるカンボジア料理は大変好評で、食事は残すことなく、完食しました。それでもパクチーには苦手な反応を示す高校生が多くいました。
 南部の都市カンポートに向かう前にプノンペンでは環境省を訪れました。責任者のかたに私たちの活動予定を報告したのち、カンボジアの環境政策について学びました。質疑応答の時間には、参加者から率直な質問が飛び出してきました。「カンボジアの地雷の状況はどうなのですか?」今回は村を訪問して歩き回るため、みんな不安もあったのでしょう。これに対して責任者のチャンドラーさんは「皆さんが行くような観光地は大丈夫です。キャンプ場も安全ですが、森の奥地の方は道に迷う可能性もあるので行かない方がいいです。」と回答してくれました。この答えにみんな安心していました。

地元高校生や子供たちとの交流

 その翌日、南部のカンポートへ向かう途中で、コンピセイという町の小学校を訪問しました。ここでは手洗いや煮沸の大切さを教える衛生教育や日本文化のクラスを行いました。カンボジアの子供たちは参加者が準備したクラスの内容にはとても興味津々でした。お昼前にクラスが終了すると、どの子も大喜びで手を振ったり、私たちとハイタッチを交わしたりしながら帰っていきました。ここはとても田舎の地域ですが、バイクに乗って通っている小学生もいました。さわやかな笑顔でバイクを運転する子供の姿がとても印象的でした。
 そしてカンポートに到着するとこれから一緒に植林活動を行う地元の高校生がお出迎えしてくれました。まずは交流を深めるプログラムから開始しました。最初はお互いに不安を抱えながら始まりましたが、自己紹介をして、チーム対抗のゲームを行うとだいぶ雰囲気は和んできました。

植林活動と兄弟姉妹結縁

 8月は雨季のため毎日一定の雨が降ります。そのため村の道路は冠水しており、バスでは目的地まで進むことができませんでした。歩いて移動するには距離があるため、地元の人にお願いしてバイクにつながった荷車に載せてもらいました。雨がたくさん降った影響で道路は凸凹です。そこを通るたびに参加者からは「ウオー!」、「キャー!」と叫び声があがり、「遊園地よりもスリルがある!」と楽しんでいました。
 村に到着すると歩いて家々を訪問していきました。モリンガはカンボジア語で「マローン」と呼ばれており、自生しています。それでも食用に使っている人はあまりいません。今回は事前に「モリンガの植林プロジェクト」を村の人々に宣伝しましたが、多くのかたが協力を申し出てくれました。そしてその家々を訪問し、もう少し説明した上でモリンガを植えてまわりました。モリンガの植林は時折やってくる激しい雨を除けばとても順調に進みました。毎日どこかのタイミングで雨が降ってきます。そんなときは訪れた家の軒先で雨宿りさせてもらい、村の人と交流しました。子供と遊んだり、モリンガの説明をしたりと、休憩の時間もまた楽しいひと時でした。こうして合計で390本の植林を行うことができました。この期間はたくさん歩いただけでなく、木を植える時には攻撃的な蟻に噛まれたりするなど大変なこともありましたが、多くの人々と交流できる貴重な機会となりました。
 そして一緒に植林活動を行ってきたカンボジアの学生たちとは兄弟姉妹結縁式で結ばれました。多くの時間を共に過ごしてきたこともあり、カンポートを発つときにはみんなが涙のお別れとなりました。

歴史学習

 カンポートでの植林活動を終えるといったんプノンペンに戻りました。ここではトゥールスレンというポルポト時代の強制収容所を訪問しました。歴史の重みを感じる大変な場所ではありますが、いろいろと感じることも多かったようです。参加者からは「日本に住んでいて平和ということがあまり分かっていなかった。」「私たちには何ができるのかを考えていきたい。」といった感想も出てきました。
 そしてアンコール遺跡も訪問してきました。日本で言えば平安時代の頃に建てられたアンコールワットを見学し、その遺跡の修復に関わる先生のお話を聞く中で相手の国の文化を尊重することの大切さや、異文化から学ぶものが多くあることをみんな感じていました。
 

参加者の感想抜粋

・発展途上国と言われる国の状況はテレビの中でしか分かりませんでした。プノンペンでは東京のようなにぎやかさがありましたが、郊外の人々の貧しい生活を見ると少し心が痛くなりました。貧しい人々の家が少しでも丈夫で住みやすいものにしてあげられる仕事に興味を持つようになりました。
 
・この期間を通して強く感じたのは世界に関心を持つことの大切さです。世界ではどんなことが起きているのか?それに対して自分ができることは何かを常に考えて行動していきたいと思いました。
 
・私はこのプロジェクトに参加して一度の人生を世界の為に尽くせるカッコいい人になりたいと本当に思いました。そのためにも今一番逃げている勉強を克服したいと思います。
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