「Global Youth Project in Indonesia 2018」活動報告

 2018年3月21日から4月1日の日程で「グローバル・ユース・プロジェクトin インドネシア 2018」(研修企画:YSP-Japan)を開催しました。今回、日本から社会人と大学生を含む6人がプロジェクトに参加しました。このプロジェクトを行うに際して三つの目的を設定しました。
 

1.世界の問題を自分の問題として考えられるグローバルリーダーとなる。

2.自然の大切さを感じ、失われた自然を回復させ、地球や次世代の未来を守る。

3.現地の人々との交流を通して、国を超えたOne Global Familyを実現する。

 
 私たちは三つのインドネシアの島々を訪ねながら、現地の人々とともに「世界平和の森」を作ることを目指して植林活動を行いました。バリ島でユーカリ種アンププの木を800本、カリマンタン島ではモリンガの木を200本植林してまいりました。またホームステイや兄弟姉妹結縁式を通して、国境や文化を超えて、家族のような絆を結ぶ機会となりました。
 現地ではプロジェクト全般にわたり、NPO法人アジア植林友好協会の宮崎林司代表理事に大変お世話になりました。

真っ黒な大地に生える希望の緑

 初めに訪れたのはバリ島北東部に位置するバトゥール山麓です。バトゥール山麓は火山の噴火の影響で、大地は火山岩で覆われ、周囲一面が真っ黒です。植林は、火山岩の間に穴を掘って土を入れ、苗木を植えて植林します。バリ島では800本の植林を行いました。
 今回、地元のキンタマーニ第一高校の生徒が22人、私たちと一緒に植林してくれました。日本とインドネシアの青年たちが協力して、一本一本まごころを込めて木を植える姿はとても感動的でした。「世界平和」の願いを込めて植林された木々たちは、やがて地球を生かす立派な森林へと成長してくれるに違いありません。
 その後、2008年から開始した植林地を年ごとに回りながら、真っ黒な大地の中ですくすくと育つ植物の力強さに心を打たれました。

温かい家族に囲まれたホームステイ体験

 植林活動を行う前日にはキンタマーニ第一高校を訪問し、2クラスに分かれて日本語紹介の授業を行いました。インドネシアで流行している「あたりまえ体操」をインドネシア語バージョンで披露したり、「だるまさんが転んだ」を行ったり、折り紙教室を開いて、カエルや手裏剣などを一緒に折ったりました。生徒たちは日本人とともに作った折り紙を大切にして持って帰っていました。折り紙が日本とインドネシアの友好の懸け橋になりました。
 午後からは高校生の家庭に一泊ホームステイをするチャレンジアクティビティーを行いました。不安そうな顔を見せていた参加者でしたが、生徒の自宅を訪れるとご家族が温かく迎えてくださり、緊張していた心がすぐにほぐされていきました。各々の家庭でおもてなしの方法はさまざまでした。ある家庭はバトゥールの歴史博物館に、ある家庭は世界遺産に登録されているバトゥール寺院を訪れてヒンドゥー式のお祈りを通した文化体験を行いました。現地の家庭での生活は日本の豊かさに気づく時間でもありました。中でもシャワーを手桶で浴びる様式に衝撃を受ける参加者もあり、日本では味わうことができない貴重な体験をする機会となりました。

国境を超えて結んだ家族の絆

 植林を終えた後、宿泊しているホテルにて兄弟姉妹結縁式を行いました。兄弟姉妹結縁式とは国籍や文化の違いを超えて家族の絆を結ぶ式典です。ホームステイ先の生徒たちとともに日本からのプロジェクト参加者たちは兄弟姉妹結縁を結びました。
 参加者の一人はこのように感想を述べております。「この結縁式を通して『本当に兄弟だな』と感じました。つながりも持てたし、今後インドネシアで事件や事故があったとすれば、自分が駆けつけてあげたいと思えるくらいになれたので、本当に参加してよかったと思いました」と笑顔で話してくれました。

忘れられた秘境「モロタイ島」

 バリ島を出発して向かったのは、インドネシアの北東部に位置する「モロタイ島」です。モロタイ島は車で6時間もあれば島を一周することができる小さな島です。一方で産業は非常に乏しく、植民地時代に島全域に植えていたヤシの木畑も年月が経つにつれて、衰退の傾向にあります。宮崎先生はこの地に「モリンガ」の木を栽培し、産業を作る取り組みを研究されています。モリンガは一般の木の20倍のCO2吸収量を誇ります。成長も早く、何よりも葉や種に母乳に匹敵する栄養素が含まれているため、貧困解決にも有効な植物で知られています。自然環境を保護し、地球の未来を守るとともに現地の人々のプラスになる事業のカタチを追及しています。今回はプロジェクト展開の可能性を調査するために、モロタイ島を視察しました。

 視察地は数カ所ありました。昨年、調査のために植えたモリンガの成長度合いを見定めて、今後使用する土地の候補を宮﨑先生絞っていくそうです。成長に多少の差はありましたが、1年前に植えたモリンガはすくすくと育っており、可能性を十分にみることができました。
 モロタイ島でプロジェクトを行う際に重要になってくるのが現地とのパートナーシップです。今回は、モロタイ島唯一の大学である「Universitas Pasific Morotai」を訪問し、学長にお会いしました。学長は快く私たちを迎えてくださり、今後の協力を約束してくださいました。
 モロタイ島は多くのことが枯渇していました。電気も計画的に停電になります。産業のなく、十分な収入もないかも知れません。しかし、滞在した4日間、私の周りにはいつも子供たちの笑顔があふれていました。海に沈む夕焼けを毎日、静かに眺めることができました。その時に気付いたことがあります。「モロタイ島には日本人が忘れてしまった貴重な何かがずっと存在している」と。少しの期間ですが、多くのことを得られる期間でした。今後、YSPでもプロジェクトを展開できるようにと検討していきます。

地球の未来を守る奇跡の木「モリンガ」の植林

 最後にカリマンタン島を訪ねました。「地球の肺」として知られ、熱帯雨林の宝庫となっていたカリマンタン島も森林伐採や自然火災の影響で急激に環境が破壊されています。私たちが行っている植林地の反対側の山では、石炭の採掘が始まっており、以前まで緑で覆われていた土地が黒く変わっていました。
 カリマンタン島での植林は地球環境を取り戻す活動に直結します。私たちはそこで「奇跡の木」として知られる「モリンガ」の苗木を現地のかたがたと200本植林しました。私たちが昨年植えた木々はすでに3メートルほどに成長し、林が形成されてきていました。
 また日本軍慰霊碑も訪問し、そこでポンガミヤの木を100本植樹しました。

小さな活動が世界を変える

 「Global Youth Project in Indonesia 2018」は短い期間でしたが、非常に貴重な内容になりました。このプロジェクトを通して植林した木々は1000本になります。YSPとして2008年から植林した累計本数は4300本となっております。今回の植林は、一年間をかけて皆さまからいただきましたワンコイン・プロジェクトのご寄付、そしてクラウドファンディングサイトReadyforで達成いたしました資金を使用させていただきました。皆さまのお気持ちに心より感謝申し上げます。今後ともよろしくお願いいたします。
 最後にワンガリン・マータイさんの言葉を紹介して締めくくりたいと思います。

「市民ができることは小さなことです。
そのことが大きな変化を生みだします。
私の小さな行動は、木を植え続けることです。」

 

参加者の感想

・バリが大好きになったし、植林活動を通して環境のこと地球のこと、自分の生活を見直し、小さなところから地球のためにできることを継続して行けることを探してやって行きたいと思いました。(社会人・22歳)
 
・宮﨑先生の話を聞いているうちに、この世界で森林が求められているのか、人と自然の共存の世界が今後必要になってくるかを考える機会を持つことができました。(高校生・18歳)
 
・自分たちが植えた木々が何十年後かに森になっていくことがすごいと実感しました。バリの人とともにホームステイをしました。みんなすごく優しくて、言葉が通じなくても言葉を越えてコミュニケーションをとってくれて本当に良かったです。(社会人・19歳)
 
・YSPの植林プロジェクトを見つけて、植林がその後の平和に一番つながると思ったので参加しました。実際に現地に来て、何よりも現地の人から「森をもとに戻したいんだ」という感情が伝わってきたなかで植林ができて、参加ができて本当によかったです。よく海外に行って「人生が変わった」「視野が広がった」という話は聞いていたのですが、やはりその通りでした。将来自分がやりたいこともこのプログラムを通して決めるきっかけにもなったので参加できて本当に良かったです。(大学生・19歳)
PAGE TOP