「Global Youth Project in Cambodia 2019」報告

概要

 世界平和青年学生連合(YSP-Japan)では8月7日から21日までカンボジアでの第2回目となるプロジェクト活動を開催しました。今回は大学生8名と高校生17名が集い、スタッフ5名と合わせて、合計30名が参加しました。今年は大規模な洪水が発生しており、私たちが訪問した南部のカンポート州は、まさにその被災した地域でした。家が洪水による被害を受けた中で、プログラムに参加してくれた学生もいました。「One Global Family」を目指して活動してきた、参加者の様子をリポートします。

アンコール王朝から続くカンボジアの歴史

 カンボジアはいつ頃から始まり、今に至っているのでしょうか?中国の資料によれば、カンボジアは1世紀頃からベトナム南部の地域で生活をしていたクメール人がルーツとされています。9世紀に入るとジャヤーヴァルマン二世が王位に就き、アンコール王朝が樹立しました。
 この頃から初期のアンコール遺跡の建設工事が始まります。12世紀前後になると、ヒンドゥー教の寺院であるアンコールワットをはじめとするアンコール遺跡が建設されました。12世紀の後半、1181年にジャヤーヴァルマン七世が王位に就くと、ミャンマーやタイの一部、そしてラオス、ベトナムにまで王国の範囲を広げます。王国が大いに繁栄する一方で大規模や工事による労役と重税によって国力は少しずつ傾いていきました。

 15世紀に入ると現在のカンボジア北部はシャム(タイ)によって奪われてしまいます。その後カンボジアはタイとベトナムから度重なる戦争や干渉を受けて徐々に領土が奪われていきます。国土を守りきれなかったカンボジアは、1863年にフランスの保護下に入ることを決断します。
 第二次大戦後には、フランスからの独立を勝ち取るものの、混乱の時代が続きます。その混乱に乗じて共産主義勢力クメール・ルージュが政権を握ると大規模な農業政策を推し進めますが、結果的に多くの餓死者を出しました。批判をおそれた政権幹部は口封じのために民間人を大量に虐殺します。クメール・ルージュが政権を奪われると再び混乱の内戦時代に入り、1991年にようやく内戦は終結します。前後の内戦を含めるとカンボジアは約二十年間で人口の三分の一が亡くなったと言われています。そのような悲しい歴史を乗り越えてカンボジアは少しずつ発展を遂げているのです。

現地での活動に向けた準備

 このようにカンボジアは1990年代から徐々に発展してきています。それでも農村部や奥地ではいまだに水道を使えない人々が多くいます。そのため子供を対象とする衛生教育はとても大切です。そしてモリンガの啓発活動や施設でのボランティア活動もカンボジアでは行っています。
 カンボジアでの活動を楽しみにしながら、集合日の8月7日、25名の大学生や高校生が集まりました。プロジェクト全体の紹介をした後に、モリンガの植林や手洗いや煮沸の大切さを紙芝居で伝える衛生教育の内容を紹介しましたが、まだあまりピンときていない様子でした。クラフトワークなど自分たちで考える「日本文化のクラス」について紹介すると、ようやく活発な意見が出るようになり、それぞれの班ごとでさまざまなアイディアが出てきました。企画づくりを通してチームの交流も深まっていきました。日本での研修となる一日目はあっという間に終了し、翌日はカンボジアへと移動しました。
 カンボジアではプノンペンの大学施設を借りて二日目の研修を行いました。翌日から始まるカンポートでの植林活動を楽しみにしつつ、みんな一生懸命に日本文化クラスや紙芝居の準備をすすめていきました。

カンポートでの活動

 8月11日は朝から南部の都市、カンポートへ移動しました。ところがカンポートでは大洪水が発生していたのです。訪問する予定だった学校や道路も浸水しており、訪問先を変えざるを得ませんでしたが、幸いにしてあらたに訪問する学校は、すぐに見つかりました。
 カンポートには合計6日間滞在しました。主に午前中は小学校に訪問して衛生教育を行い、午後からは村をまわり、モリンガを紹介して植林するプログラムです。これらのプログラムを地元の高校生と一緒に行いました。カンポートに到着した初日は、お互いをよく知り合うために交流企画を行いました。日本の学生もカンボジアの学生もはじめのうちは英語で声をかけることに、戸惑いを感じていました。チーム対抗のゲームを行い、モリンガについての話し合いを進めていくと、徐々に打ち解けていきました。そして交流企画の最後に兄弟姉妹結縁式を行うと、グループでの一体感はさらに高まりました。

 翌日の12日からは小学校を訪問しました。初めのうちは、衛生教育と日本文化のクラスでは、どのように進めればよいのか分からず、不安そうにしていましたが、日を重ねるにつれて、みんな自信を持って行えるようになっていきました。植林も同様で、初日はモリンガの説明がたどたどしく、小さな声での説明でした。モリンガはカンボジアに昔からある木なので、話をすると知っている人は多くいました。そのメリットを説明すると、協力を断る人は誰もいませんでした。むしろ「もっと置いていってほしい」と言われるかたもいたほどです。学生たちは徐々に自信を持ってモリンガを説明できるようになっていきました。
 参加した学生たちはプロジェクトを通してモリンガに愛着を持つとともに、カンボジアの学生との一体感も深めていきました。

施設や遺跡の訪問

 冒頭でも少し紹介しましたが、カンボジアは世界的に有名なアンコール王朝時代の遺跡が残っている国でもあり、民間人が大虐殺されたポルポト政権時代の悲しい歴史もある国です。カンボジアには拷問や虐殺が行われた当時の高校が博物館としてそのまま残されています。いまの時代に生きる私たちが歴史の過ちを繰り返さないようにと展示されているのです。展示された資料から、当時の人々がどれほど大変だったのかを学び、参加者は大きな衝撃を受けていました。
 そしてマザーテレサの施設にも訪問しました。ここの施設には、知的障害者の方がいますが、多くの参加者はシスターの献身的な姿勢に心を打たれていました。

 また、アンコールワットを見学した時には、みんな建物の規模や美しいレリーフを見てまわり、そこに込められたヒンドゥーの物語を新鮮な気持ちで聞いていました。カンボジアは世界に誇る遺跡を持ち、困難な歴史を乗り越えて、いまの時代を迎えていることを学びました。

参加者の感想抜粋

・現地の方が自分たちのモリンガの説明を聞いて、『もっとモリンガを植えたい』と言ってくれたことや日本文化のクラスで自分たちが考えた遊びを笑顔で楽しんでくれる姿をみながら、もっといろいろな人に関わりたいと思えた。
 
・最初は言葉の壁を感じて、英語で話す自信が持てなかったが、一緒にいる中で姉妹結縁を結んだ相手の良い面やかわいらしい一面をたくさん見ることができて、コミュニケーションをとることができた。人類一家族世界は達成できるのではないかと感じられた。
 
・自分たちはどれほど幸せな環境で暮らしていたのかを気づかされました。当たり前のことを当たり前だと思わずに、毎日感謝する生活をしていきたいです。

・自分の住んでいる世界は平和なのか?カンボジアに来る前はそんなこと全く思ってもいなかったので、考えが変わって、見える世界も変わった。だからこれからは行動を起こしていきたい。

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